軟部外科
【犬猫】「子宮蓄膿症と乳腺腫瘍」の症例から考える避妊手術のススメ
今回はフレンチブルドックの子宮蓄膿症(パイオメトラ)症例とパピヨンの乳腺腫瘍症例のご紹介をします。
どちらも避妊手術をしないことで、発症リスクが高まる疾患です。
子宮蓄膿症とは?
子宮蓄膿症は、細菌感染により子宮内に膿が溜まってしまう病気です。
膣から子宮内へと侵入した細菌は、子宮内で増殖し、毒素を出します。
その毒素により、血栓ができたり、腎不全を起こしたりして、命に関わる重篤な状態になることも多いです。
状態にもよりますが、卵巣・子宮を摘出することが一番に選択されます。
緊急処置を必要とする怖い病気ですが、適切な時期に避妊手術をすることで防げる病気でもあります。
子宮蓄膿症手術時の様子をご紹介します。
※手術中の写真があるためご注意ください。予めご了承いただいた場合のみお進みください。
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正常な子宮に比べ子宮蓄膿症の子宮には内部に膿が溜まるため何倍もの太さになっています。
卵巣・子宮を摘出しています。
乳腺腫瘍とは?
乳腺腫瘍(にゅうせんしゅようは、乳腺にできる腫瘍で、避妊手術をしていないメスでよくみられる腫瘍の1つです。
若いうちに発生することもありますが、多くは10歳くらいで見られます。
まれにオスに発生することもあります。
ワンちゃんでは、約50%が良性であることがわかっていますが、悪性の場合はリンパ節や肺への転移がもっともよくみられます。
また、肝臓、腎臓、脾臓(ひぞう)などへの転移もありえます。
乳腺腫瘍手術時の様子をご紹介します。
※手術中の写真があるためご注意ください。予めご了承いただいた場合のみお進みください。
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大きくなった乳腺腫瘍です。
乳腺腫瘍を切除しました。
切除部位を縫って手術終了です。
今回ご紹介した子宮蓄膿症や乳腺腫瘍は避妊手術をすることで、発症リスクを抑えることができます。
なぜ去勢手術・不妊手術が必要なの?
動物自身の健康とQOL(Quality of Life=生活の質)を向上させ、家族の一員として人間社会の中で長く幸せに暮らすためです。
「繁殖がしたいのにできない」というのは犬・猫にとって大きなストレスです。
その状態が続くと食欲不振になったり、神経質になってしまいます。
手術をすることによって精神的に安定しますし、生殖器関連の病気を予防することもできます。
Q.避妊手術はどんな手術?
全身麻酔下で両側の卵巣と子宮を摘出します。
卵巣だけを摘出すると、子宮内に炎症やガンが発生する可能性が生じるからです。
傷もたいへん小さく、およそ2週間後に抜糸した後は、通常の生活に戻れます。
避妊手術を受けた動物は繁殖能力が無くなります
Q.避妊手術はどんな効果があるの?
生後6カ月の性成熟前に不妊手術を行えば、異性の動物や人間に対する性的行動はほとんどなくなります。
発情期特有の神経質な状態や鳴き声、発情に伴う出血などがなくなるため、飼い主様自身の生活する上でのメリットもあります。
医学的には生殖器関連の病気(子宮蓄膿症、卵巣嚢腫、乳腺腫瘍など)を予防することができます。
Q.去勢手術はどんな手術?
全身麻酔下で両側の精巣(睾丸)を摘出します。
傷もたいへん小さく、およそ1週間後には通常の生活に戻れます。
去勢手術を受けた動物は繁殖能力が無くなります。
Q.去勢手術はどんな効果があるの?
生後6カ月の性成熟前に去勢手術を行えば、異性の動物や人間に対する性的行動(マウンティング)や、縄張りを維持するための行動(マーキング)はほとんどの場合なくなります。
動物同士のけんかや攻撃性も大幅に減らせます。
医学的には生殖器関連の病気(精巣腫瘍、前立腺肥大、前立腺炎、肛門周囲腺腫瘍など)の全ての予防に効果があります。
不妊・去勢手術をするのはかわいそうだという飼い主様もいらっしゃいますが、将来的に繁殖を考えていないのであれば、早めに避妊・去勢手術をすることをおすすめします。
愛犬・愛猫の一生に関わることですので、家族で良く話し合ってみてください。
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