【犬】子宮蓄膿症とは?8歳の豆柴の緊急手術症例と症状・予防方法

子宮蓄膿症は、避妊手術を受けていないメス犬に発症する病気で、子宮の中に膿がたまってしまう状態です。進行すると命に関わることもあり、緊急手術が必要になる場合があります。

今回は、子宮蓄膿症により緊急手術を行った8歳の豆柴の症例をご紹介するとともに、症状や治療方法、予防の重要性について解説します。

※この記事には、手術で摘出した子宮の写真が含まれます。

 

1.症例紹介|8歳の豆柴の子宮蓄膿症

今回ご紹介するのは、8歳の豆柴の女の子です。

 

症例情報
  • 犬種:豆柴

  • 年齢:8歳

  • 体重:約6kg

  • 診断名:子宮蓄膿症

  • 治療:緊急手術による子宮の摘出

  • 術後経過:順調に回復中

子宮蓄膿症と診断され、緊急手術を実施しました。

 

実際に摘出した子宮

写真は、今回の手術で実際に摘出した子宮です。体重約6kgの小さな体の中で、子宮がここまで大きく膨らんでいました。

子宮蓄膿症では、子宮内に膿がたまることで、通常よりも子宮が大きく膨らむことがあります。このように子宮が大きくなると、子宮破裂や腹膜炎などの重大な合併症を引き起こす危険性もあります。

今回のワンちゃんは、手術後の経過も良好で、現在は順調に回復しています。

 

2.犬の子宮蓄膿症とは?

子宮蓄膿症とは、子宮内で細菌が増殖し、膿がたまってしまう病気です。

主に避妊手術を受けていないメス犬に発症し、特に中高齢のワンちゃんで多く見られます。発情後のホルモン変化によって子宮内が細菌感染を起こしやすい状態となり、発症すると考えられています。

子宮蓄膿症は、単に子宮に膿がたまるだけの病気ではありません。進行すると細菌やその毒素の影響が全身に及び、敗血症、腎機能障害、ショックなどを引き起こすことがあります。また、膿によって膨らんだ子宮が破裂すると、腹膜炎を起こす危険性もあります。

そのため、早期発見と適切な治療が非常に重要な病気です。

 

3.犬の子宮蓄膿症で見られる主な症状

子宮蓄膿症では、次のような症状が見られることがあります。

  • 元気がなくなる、ぐったりする

  • 食欲が落ちる

  • 水を飲む量が増える

  • おしっこの量が増える

  • 嘔吐や下痢をする

  • お腹が膨らむ

  • 陰部から膿や血の混じった分泌物が出る

  • 発熱する(発熱しない場合もあります)

これらは子宮蓄膿症で見られる代表的な症状ですが、症状だけで病気を判断することはできません。

また、子宮蓄膿症は発情が終わってから1〜2か月ほどの時期に発症することが多いため、発情後の体調変化には注意が必要です。

 

膿が出ない子宮蓄膿症にも注意

子宮蓄膿症には、大きく分けて2つのタイプがあります。

 

① 開放性子宮蓄膿症
子宮の出口が開いており、陰部から膿や血の混じった分泌物が出るタイプです。

 ② 閉鎖性子宮蓄膿症
子宮の出口が閉じているため、膿が外に排出されず、子宮内にたまるタイプです。閉鎖性では、陰部から分泌物が出ないため、飼い主様が異変に気づきにくい場合があります。

 

「陰部から膿が出ていないから大丈夫」とは限りません。避妊手術を受けていないメス犬で、元気や食欲の低下、多飲多尿などが見られた場合は、早めに動物病院を受診してください。

 

4.子宮蓄膿症の検査・診断方法

子宮蓄膿症が疑われる場合は、症状や身体検査の結果に加え、主に次のような検査を行います。

 

血液検査

白血球数や炎症反応、腎臓・肝臓の数値などを確認します。細菌感染による炎症の程度や全身状態を評価し、手術や麻酔のリスクを判断するうえでも重要な検査です。

 

超音波検査(エコー検査)

子宮の大きさや、子宮内部に液体がたまっていないかを確認します。子宮蓄膿症の診断において重要な検査の一つです。

 

レントゲン検査

子宮が大きく膨らんでいる場合、レントゲン検査で確認できることがあります。必要に応じて複数の検査を組み合わせ、子宮の状態や全身への影響を評価します。

 

5.子宮蓄膿症の治療方法|手術が基本

子宮蓄膿症の基本的な治療は、膿がたまった子宮と卵巣を摘出する外科手術です。

子宮蓄膿症では、子宮内の細菌感染が進行することで、短時間のうちに全身状態が悪化する場合があります。そのため、診断後は全身状態を確認しながら、速やかに治療を進める必要があります。

手術前後には、状態に応じて点滴や抗菌薬などを使用し、全身状態の安定化を図ります。

 

通常の避妊手術との違い

子宮蓄膿症の手術は、健康な状態で行う通常の避妊手術とは異なります。すでに細菌感染や炎症が起きていることに加え、子宮が大きく膨らんでいる場合もあるためです。また、脱水や腎機能障害などを伴うこともあり、麻酔や手術に伴うリスクが高くなる場合があります。そのため、病気になってから緊急手術を受けるよりも、健康なうちに予防を検討することが大切です。

 

注射薬による内科的治療について

子宮蓄膿症には、手術以外にも、注射薬などを使用する内科的治療があります。近年では、アグレプリストンなどの薬剤を使用し、子宮内にたまった膿の排出を促す治療が行われることもあります。ただし、すべてのワンちゃんに適応できるわけではなく、治療後に再発する可能性もあります。

 

そのため、子宮蓄膿症では外科手術が基本となりますが、全身状態や繁殖希望などによっては、内科的治療が検討される場合もあります。

 

6.犬の子宮蓄膿症を予防するには?

子宮蓄膿症を予防するうえで、最も有効な方法は避妊手術です。卵巣と子宮を摘出する避妊手術を行うことで、子宮蓄膿症の発症を予防できます。

 

避妊手術は若いうちに受けた方がよい?

避妊手術は、子宮蓄膿症の予防だけでなく、乳腺腫瘍など一部の病気の発症リスクを下げる効果も期待できます。ただし、適切な手術時期は犬種や体格、健康状態などによって異なります。避妊手術にはメリットだけでなく、麻酔リスクや術後の体重増加など、考慮すべき点もあります。そのため、繁殖予定の有無も含め、獣医師と相談しながら検討することをおすすめします。

 

8歳でも避妊手術はできる?

8歳だからといって、必ずしも避妊手術ができないわけではありません。手術が可能かどうかは、年齢だけでなく、心臓や腎臓などの状態、持病の有無、術前検査の結果などを踏まえて判断します。中高齢のワンちゃんで避妊手術を受けていない場合も、一度獣医師にご相談ください。

 

7.犬の子宮蓄膿症についてよくあるご質問

Q.犬の子宮蓄膿症は自然に治りますか?

基本的に自然治癒は期待できません。子宮内に細菌感染が起きているため、放置すると全身状態が悪化し、命に関わる場合があります。子宮蓄膿症が疑われる場合は、早急な診察が必要です。

 

Q.子宮蓄膿症は何歳くらいから発症しますか?

避妊手術を受けていない中高齢のメス犬で多く見られますが、若いワンちゃんでも発症する可能性があります。年齢だけで判断せず、発情後の体調変化に注意することが大切です。

 

Q.子宮蓄膿症の手術後は元気になりますか?

適切な治療によって回復するワンちゃんは多くいます。ただし、手術前の全身状態や感染の程度、合併症の有無などによって回復までの期間は異なります。重症の場合は術後も集中的な治療が必要になることがあります。今回ご紹介した豆柴のワンちゃんは、手術後、順調に回復しています。

 

Q.避妊手術をしていれば子宮蓄膿症にはなりませんか?

卵巣と子宮を適切に摘出していれば、通常の子宮蓄膿症は予防できます。ただし、まれに残存した卵巣組織などが関与して、子宮の残存部分に感染が起こる「子宮断端蓄膿症」が発生することがあります。避妊手術後であっても、体調に異変がある場合は受診してください。

 

Q.子宮蓄膿症が疑われる場合、すぐに病院へ行くべきですか?

はい。できるだけ早く動物病院を受診してください。特に、ぐったりしている、食欲がない、嘔吐を繰り返す、お腹が膨らんでいるといった症状がある場合は、緊急性が高い可能性があります。様子を見ている間に状態が悪化することもあるため、早めの対応が重要です。

 

8.まとめ|子宮蓄膿症は早期発見と予防が大切です

子宮蓄膿症は、避妊手術を受けていないメス犬であれば、どの子にも発症する可能性がある病気です。特に、発情後に元気や食欲が落ちたり、水を飲む量が増えたりした場合は注意が必要です。

子宮蓄膿症は、早期発見・早期治療が大切であると同時に、避妊手術によって予防できる病気でもあります。愛犬の体調に気になる変化がある場合や、避妊手術についてお悩みの場合は、お気軽に当院までご相談ください。

カテゴリ|軟部外科

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