軟部外科
【犬】「停留睾丸」とは?|当院のCT検査による安全な去勢手術
1. 停留睾丸(潜在精巣)とは?
オス犬の睾丸は、通常生後2か月頃までに陰嚢(ペニスの付け根にある袋)の中に降りてきます。しかし、なんらかの理由で片方または両方の睾丸が、陰嚢まで降りてこず、お腹の中や太ももの付け根の皮下などに留まってしまうことがあります。これを「停留睾丸(ていりゅうこうがん)」または「潜在精巣(せんざいせいそう)」と呼びます。
停留睾丸の主な原因は、遺伝的なものと考えられています。遺伝性の病気であるため、停留睾丸と診断されたワンちゃんを繁殖に利用することは推奨されていません。
2. 停留睾丸を放置しておくとどうなるの?
「見えないだけなら、別にいいんじゃない?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、停留睾丸を放置しておくことは、愛犬の命を危険にさらす可能性があります。
精子形成のためには、体温より少し低い温度が必要です。そのため、正常な睾丸は体外の陰嚢に収められています。
しかし、停留睾丸は体内に留まっているため、常に高い体温にさらされている状態になります。この熱ストレスが、睾丸の細胞に悪影響を与え、細胞分裂の異常を引き起こす原因の一つと考えられています。この状態が長く続くことで、最終的に腫瘍化のリスクが高まると言われています。
さらに、まれに「精巣捻転」を起こすこともあり、その場合は激しい痛みを伴う救急疾患となってしまいます。
愛犬の健康と安全のため、停留睾丸と診断された場合は、去勢手術と同時に摘出することをおすすめします。
3. 停留睾丸の検査方法
陰嚢内に睾丸が触れない場合、超音波検査(エコー)やレントゲン検査でお腹の中や太ももの付け根を検査します。しかし、残念ながらこれらの検査だけでは、停留睾丸の正確な位置を特定するのが難しいことも少なくありません。
特に、お腹の中に入ってしまった睾丸は、周りの臓器に隠れて見つけにくいことがあります。この場合、獣医師は過去の経験と解剖学的な知識に基づいて、停留睾丸がある可能性が高い場所(多くは腎臓の下あたりから膀胱にかけて)を切開し、手探りで探し出すことになります。これは、手術時間や切開する範囲が広くなる可能性があり、動物への負担が大きくなってしまうというデメリットがあります。
当院の「CT検査」が、愛犬の負担を減らします
そこで当院では、より安全な手術を行うために、CT検査をおすすめしています。
CT検査は、360度から体の内部を撮影し、停留睾丸の位置をミリ単位で正確に特定することができます。これにより、手術でどこを切開すればいいかが事前に分かり、必要最小限の切開で睾丸を摘出することが可能になります。
切開範囲が少ないことは、愛犬の術後の痛みや体への負担を大きく軽減することに繋がります。

4. 当院の停留睾丸手術事例
症例1 1歳のワンちゃん
左の睾丸は陰嚢内にあり正常ですが、右の睾丸が見つかりません。

CT画像を細かくチェックし、右の睾丸が膀胱の近くで発見されました。


症例2 1歳のワンちゃん
同じく、左の睾丸は陰嚢内にあり正常ですが、右の睾丸が見つからないワンちゃんの症例です。

この子は、先ほどの子よりもさらに上部(頭側)に右の睾丸が発見されました。


どちらの子も、CT検査で得られた情報をもとに、右睾丸の位置を正確に把握し、最小限の切開で手術を行いました。手術はスムーズに進み、術後の経過も良好で、ワンちゃんは元気に退院しました。
当院の避妊・去勢手術の流れについて
当院では、ワンちゃん・ネコちゃんが安心して手術に臨めるよう、万全の体制を整えています。停留睾丸の手術も、去勢手術の流れに沿って行いますので、安心してお任せください。
STEP1:術前検査
手術は全身麻酔をかけるため、事前に術前検査を実施します。 内臓などに問題がないか、血液検査やレントゲン検査を行います。特に麻酔の代謝に関わる「腎臓」「肝臓」に異常がないかを確認し、問題がない子のみ手術を実施します。※停留睾丸の子は必要に応じてCT検査を行います。
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STEP2:手術前の準備
ご自宅で、手術の前日から準備をしていただきます。
・前日の夜9時以降は何も食べさせないでください。
・当日の朝8時以降は、お水も飲ませないでください。
これは、麻酔中に動物が吐いてしまった際に、吐しゃ物を呼吸と一緒に吸い込んでしまい、肺炎や窒息死を招く恐れがあるためです。絶食・絶水ができなかった場合は、安全のため手術を延期します。
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STEP3:手術当日
午前中にご来院いただき、お預かりします。手術は午後から実施し、当日の状況により前後しますが、手術時間は約20〜45分です。
手術は、万全を期していても予想しないことが起こることがあります。手術中は緊急連絡が取れるようにご準備をお願いします。
お迎えは当日の17時から19時頃にお越しください。
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STEP4:手術翌日以降
手術翌日に貧血や傷口の確認のためご来院いただきます。 ワンちゃんは、約2週間後に抜糸のため再度ご来院が必要です。
当院の避妊・去勢主手術の特徴
1. 充実の人員配置
当院では、執刀医、手術助手、器具出し、麻酔管理など、最大5人体制で手術にあたっております。これにより、トラブルの未然防止と、万が一の事態にも迅速に対応することが可能です。
2. 最新設備の導入
当院では最新設備を導入しています。例えば電気メスで、糸を使わずに血管をシーリングすることができ、手術時間が短縮されます。手術時間の短縮は、動物の体にかかる負担を大きく軽減することに繋がります。
最後に
去勢手術は、愛犬の健康を守るための大切な手術です。特に停留睾丸と診断された場合は、将来のリスクを避けるためにも、早めの手術をおすすめします。
当院では、CT検査を有効活用し、愛犬の負担を最小限に抑えた安全な手術をご提案しています。ご不明な点やご不安なことがございましたら、お気軽にご相談ください。
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