【猫】心臓病(肥大型心筋症)と「早期発見」の大切さ

循環器専門外来の獣医師 見上です。

今回は、猫ちゃんに最も多い心臓病である「肥大型心筋症(ひだいがたしんきんしょう)(HCM)」について、専門家の立場からお話ししたいと思います。

 

「昨日まで元気だったのに…」突然訪れる心臓病のサイン

 「昨日まで元気だったのに…」

診察室で肥大型心筋症(HCM)の診断をお伝えしたとき、多くの飼い主様から、よくそんな言葉を耳にします。

 

それもそのはず、この病気は初期にはほとんど症状を見せません。

多くの場合、元気に走り回り、食欲も旺盛で、普段と何も変わらないように見えます。

しかし、水面下で静かに進行し、ある日突然、呼吸困難や後ろ足の麻痺(血栓症)といった、命に関わる深刻な状態で初めて姿を現すのです。

私たちは、こうした悲しい事態を一つでも減らしたいと心から願っています。

 

 

早期発見で守られた、ある猫ちゃんのお話

8歳のAちゃんという猫ちゃん。

Aちゃんは健康診断の際に、オプションの心臓超音波(エコー)検査を受けました。

そこで、まだ症状が出ていない軽度の肥大型心筋症が見つかったのです。

 

もし検査を受けていなければ、病気に気づかないまま過ごしていたでしょう。

しかし、Aちゃんは無症状のうちから進行を穏やかにするお薬を始め、生活のアドバイスを守っていただくことで、数年が経った今も元気に暮らし、苦しい発作を起こすことなく穏やかな毎日を送っています。

 

この子の未来は、飼い主様の「念のため」の選択によって大きく変わりました。

 

 

猫の心臓病「肥大型心筋症(HCM)」とは?

 

少し専門的な話になりますが、この病気は心臓の筋肉(特に、血液を全身に送り出すポンプの役割を持つ「左心室」)が、内側に向かって分厚く硬くなってしまう病気です。

筋肉が厚くなることでポンプの部屋が狭くなり、一度に送り出せる血液の量が減ってしまいます。

また、心臓がうまく拡がれなくなるため、心臓や肺に血液が滞り(うっ血)、呼吸が苦しくなってしまうのです。

 ある日突然症状が現れることもあり、「今元気だから大丈夫」とは限りません。

 

 

なぜ「症状のない今」の検査が大切なのか

 「元気だから大丈夫」が通用しにくいのが、この病気の怖いところです。

症状のないうちに見つけることには、大きなメリットがあります。

 

  • 無症状のうちに発見できれば、進行を遅らせる治療ができる

  • 突然死や血栓症などのリスクを減らせる

  • 病気と正しく向き合うことで、飼い主さんが安心して生活できる

 

「症状が出てから」ではなく、「今」検査を受けることが、猫ちゃんの未来を守る第一歩です。

 

 

特に検査をおすすめしたい猫ちゃん

以下のような猫ちゃんは、遺伝的素因などで肥大型心筋症(HCM)にかかりやすいことが知られています。

 

【特に注意したい品種の例】

メインクーン、ラグドール、ブリティッシュショートヘア、アメリカンショートヘア、スフィンクス、ベンガル、シャルトリュー、ノルウェージャンフォレストキャット、シベリアン、ペルシャ、ビルマ(Birman)、スコティッシュフォールド、コーニッシュレックス、ヒマラヤン、その他の純血種

 

ただし、心臓病とはこれらの品種に限らず、どんな猫ちゃんでも発症する可能性がある、ごく普通にみられる病気です。

 

【一般的な注意点】
  • 成猫(特に5歳以上)
  • 同居猫や血縁に心臓病の既往がある場合
  • 呼吸が速い、疲れやすい、食欲低下などの微妙な変化がある場合

 

純血種でない雑種の猫ちゃんでも肥大型心筋症(HCM)は発症するため、完全に安全な「心臓」はありません。

「心臓は大丈夫」と思わず一度チェックすることが大切です。

 

 

心臓検査の流れ

 1.問診

まずは猫ちゃんの普段の様子や気になる症状、既往歴などをお伺いします。
呼吸の状態や運動時の様子も確認します。

 ↓

2.身体検査

聴診器で心音や呼吸音を確認します。
不整脈や雑音がないかチェックします。

 ↓

3.心電図(ECG)検査

心臓の電気的な動きを調べ、不整脈の有無を評価します。

4.胸部レントゲン検査

心臓の大きさや形、肺の状態を確認します。

5.心臓エコー検査(超音波検査)

最も重要な検査で、心臓の壁の厚さや動き、血液の流れをリアルタイムで観察します。
肥大型心筋症の診断や重症度の評価に欠かせません。

6.血液検査(必要に応じて)

心臓に負担がかかっているかを示す指標(例:NT-proBNP)を調べることもあります。

 

 

最後に

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

犬猫の循環器の専門家として、私は「もっと早くご相談いただけていれば…」という悔しい場面と、早期発見によって元気に過ごし続ける猫ちゃんたちの喜ばしい場面、その両方を数多く経験してきました。

その差は、飼い主様の「念のため」という小さな一歩であることが少なくありません。

 

このお話が、皆様にとって愛猫の健康を改めて見つめ直し、行動するきっかけとなれば、これに勝る喜びはありません。

皆様と大切な猫ちゃんの未来を守るため、私の知識と経験が少しでもお役に立てることを願っています。

 

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カテゴリ|心臓病

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