犬の後ろ足に力が入らない・ふらつく原因は?考えられる病気と鍼灸治療について解説

「愛犬の後ろ足が急にふらつくようになった」
「歩いていると後ろ足がもつれる」
「立ち上がろうとしても、後ろ足に力が入らない」

このような症状が見られたら、飼い主様も心配になると思います。

犬の後ろ足に力が入らない、ふらつくといった症状には、関節や筋肉の問題だけでなく、背骨や神経の病気など、さまざまな原因が考えられます。また、徐々に症状が現れる場合もあれば、突然歩けなくなる場合もあり、症状の現れ方によっては早急な治療が必要になることもあります。

今回は、兵庫県加古川市のバークレー動物医療センターが、犬の後ろ足がふらつく原因や考えられる病気、動物病院での検査・治療について解説します。

また、治療の選択肢の一つである鍼灸治療についてもご紹介します。

 

1.犬の後ろ足がふらつく・力が入らないときの症状

後ろ足の異常といっても、症状の現れ方はさまざまです。

例えば、次のような変化が見られることがあります。

  • 歩いていると後ろ足がふらつく

  • 後ろ足がもつれたり、交差したりする

  • 立ち上がろうとしても後ろ足に力が入らない

  • 後ろ足を引きずるように歩く

  • 足先を地面に擦る、爪が削れる

  • 歩いている途中で腰が落ちる

  • 後ろ足が震える

  • 急に立てなくなった、歩けなくなった

こうした症状は、片方の後ろ足だけに現れる場合もあれば、両方の後ろ足に現れる場合もあります。また、痛みを伴う場合もあれば、目立った痛みがないまま歩き方に異常が現れることもあります。

「痛がっていないから大丈夫」とは限らないため、歩き方や足の動きに変化が見られたら注意が必要です。

 

2.犬の後ろ足に力が入らない・ふらつく主な原因

① 椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアは、背骨の間にある椎間板が突出するなどして、脊髄や神経を圧迫する病気です。後ろ足のふらつきや力の入りにくさ、歩行の異常などが見られることがあります。症状が進行すると、自力で立ち上がったり歩いたりすることが難しくなる場合もあります。

椎間板ヘルニアでは、症状によって内科治療や外科手術などが検討されます。詳しくは、以前のブログ「犬の椎間板ヘルニアに鍼灸治療はできる?治療の考え方を解説」でもご紹介しています。

 

② 変形性関節症

変形性関節症は、関節の軟骨や周囲の組織に変化が生じ、痛みや動かしにくさにつながる病気です。股関節や膝関節などに問題があると、後ろ足をかばうように歩いたり、立ち上がりにくくなったりすることがあります。特に高齢犬では、徐々に歩き方が変化することもあります。

 

③ 膝蓋骨脱臼や前十字靱帯の損傷

膝蓋骨脱臼は、膝のお皿にあたる膝蓋骨が正常な位置から外れる病気です。また、膝関節を支える前十字靱帯が損傷すると、後ろ足をかばう、体重をかけにくくなるといった症状が見られます。こうした整形外科の病気でも、後ろ足に力が入らないように見えることがあります。ただし、神経の異常によるふらつきとは原因が異なるため、診察によって見極めることが大切です。

 

④ 変性性脊髄症(DM)

変性性脊髄症は、脊髄の神経機能が徐々に障害される進行性の病気です。一般的には後ろ足のふらつきや足先を擦るような歩き方などから始まり、時間の経過とともに歩行が難しくなることがあります。初期には強い痛みが目立たないこともあり、加齢による足腰の衰えと区別しにくい場合があります。ただし、似た症状を示すほかの病気もあるため、症状だけで変性性脊髄症と判断することはできません。

 

⑤ 筋力低下やその他の病気

加齢や運動量の低下によって筋肉量が減少すると、後ろ足で踏ん張りにくくなることがあります。また、全身の体調不良や代謝性疾患、神経・筋肉の病気などが原因で、力が入りにくくなる場合もあります。後ろ足のふらつきは、一つの病気だけに特徴的な症状ではありません。そのため、症状の経過や身体の状態を確認し、原因を調べることが重要です。

 

3.後ろ足のふらつきは、どのように診断するの?

動物病院では、まず症状が現れた時期や経過を確認します。

例えば、

  • いつからふらつくようになったのか

  • 突然始まったのか、徐々に悪くなったのか

  • 片足だけなのか、両足なのか

  • 痛みがあるのか

  • 排尿や排便に変化がないか

といった情報が診断の手がかりになります。そのうえで、身体検査や整形外科的な検査、神経学的な検査などを行い、異常が起きている場所や考えられる原因を確認します。

 

必要に応じて画像検査を行います

検査の結果、さらに詳しく調べる必要がある場合には、レントゲン検査やCT検査などを行うことがあります。当院ではCTを導入しており、背骨や骨の状態など、詳しい画像評価が必要と判断した場合に活用しています。

ただし、すべての神経疾患がCTだけで診断できるわけではありません。脊髄そのものの評価などにはMRI検査が適している場合もあり、疑われる病気や症状によって必要な検査は異なります。

大切なのは、後ろ足がふらついているという症状だけで病気を決めつけず、原因に応じた検査を行うことです。

 

4.ご自宅で確認しておきたいポイント

後ろ足の異常が見られた場合には、どのような場面で症状が出るのかを確認しておくと、診察時の参考になります。

 

歩き方を動画で撮影する

可能であれば、普段の歩き方をスマートフォンで撮影しておくのがおすすめです。特に、横から見た歩き方だけでなく、後ろから見た様子や方向転換するときの動きなども参考になります。ただし、歩けない犬を無理に歩かせたり、痛がる犬を動かしたりする必要はありません。

 

足先や爪の状態を見る

後ろ足を引きずるように歩いている場合、足先や爪の一部が地面に擦れていることがあります。爪の削れ方が左右で違う、足先に傷ができているといった変化も、診察時に伝えてください。

 

症状が変化していないか確認する

最初は少しふらつくだけだったのに、徐々に立ち上がりにくくなったり、歩ける距離が短くなったりすることもあります。症状が悪化している場合には、早めの診察が必要です。

 

5.後ろ足がふらつく犬には、どんな治療方法があるの?

後ろ足のふらつきや力の入りにくさに対する治療は、原因となる病気や症状の程度によって異なります。主な治療方法として、内科治療や外科治療があり、状態によっては鍼灸治療などを組み合わせることもあります。

① 内科治療

内科治療では、原因となる病気や症状に応じて、薬物治療や安静、生活環境の見直しなどを行います。例えば、関節の痛みがある場合には、痛みや炎症を抑える薬を使用したり、体重管理や運動方法の調整を行ったりすることがあります。

また、椎間板ヘルニアでも、症状や身体の状態によっては、安静や薬物治療を中心とした内科治療を行う場合があります。

 

② 外科治療

椎間板ヘルニアによって脊髄が圧迫されている場合や、膝関節などに外科的な処置が必要な病気がある場合には、手術を検討することがあります。例えば、椎間板ヘルニアでは、脊髄を圧迫している椎間板の内容物を取り除く手術を行う場合があります。当院でも、これまで椎間板ヘルニアなどの神経疾患に対して外科治療を行ってきました。

ただし、後ろ足がふらついているからといって、必ず手術が必要になるわけではありません。検査結果や症状の程度などを踏まえ、適切な治療方法を検討します。

 

③ 鍼灸治療という選択肢

後ろ足のふらつきや身体の動かしづらさなどに対して、治療の選択肢の一つとして鍼灸を検討する場合もあります。ただし、鍼灸は、後ろ足がふらつく原因となるすべての病気を治すものではありません。

例えば、脊髄への圧迫が強く、外科手術が必要な場合などには、鍼灸だけで対応することは適切ではありません。また、鍼灸による反応には個体差があり、必ず歩行機能が改善するというものでもありません。当院では、必要な診察や検査を踏まえ、ほかの治療との組み合わせも含めて鍼灸を検討しています。

 

④ リハビリテーション・生活環境の改善

原因となる病気や身体の状態によっては、リハビリテーションを取り入れる場合もあります。筋力や身体の動かしやすさを維持するための運動、立ち上がりや歩行を補助する工夫など、その子に合わせた方法を検討します。また、ご家庭でも滑りにくいマットを敷く、段差を減らすなど、生活環境を整えることが大切です。

ただし、神経症状や痛みがある場合には、運動によって症状が悪化することもあるため、自己判断で無理に動かさないようにしましょう。

 

後ろ足のふらつきに対して、すべての犬に同じ治療を行うわけではありません。まずは原因を確認し、その子の状態に合わせて必要な治療を選択することが大切です。

 

6.こんな症状がある場合は、早急に動物病院へ

後ろ足のふらつきには、緊急性の高い病気が隠れている場合もあります。
特に、次のような症状が見られる場合には注意が必要です。

  • 突然、後ろ足に力が入らなくなった

  • 急に立ち上がれなくなった、歩けなくなった

  • 後ろ足を引きずるようになった

  • 強い痛みがある、身体を触ると鳴く

  • 短時間で症状が悪化している

  • 後ろ足の異常とともに排尿ができなくなった

このような場合には、鍼灸治療や自宅での様子見を優先せず、速やかに動物病院を受診してください。また、軽いふらつきであっても、症状が続く場合には早めの診察をおすすめします。

 

7.後ろ足のふらつき・力の入りにくさを感じたらご相談ください

犬の後ろ足に力が入らない、ふらつくといった症状には、椎間板ヘルニアや関節疾患、神経疾患、筋力低下など、さまざまな原因が考えられます。同じような歩き方に見えても、原因によって必要な検査や治療は異なります。

そのため、「年齢のせいだろう」「しばらく様子を見れば治るだろう」と自己判断せず、症状の原因を確認することが大切です。

兵庫県加古川市のバークレー動物医療センターでは、足腰の痛みや歩き方の変化などについて診察を行い、症状や身体の状態に応じて治療方法をご提案しています。また、鍼灸担当獣医師による犬・猫の鍼灸治療も行っています。

加古川市周辺で愛犬の足腰の衰えや鍼灸治療についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

 

甲斐 達雄 鍼灸専門獣医師

鳥取大学獣医学部卒業

1972年、鍼麻酔による手術のニュースをきっかけに鍼治療に興味を持ち、その後、犬・猫の鍼灸治療に携わってきました。長年にわたり鍼灸について研鑽を重ね、現在は週2回、当院で鍼灸治療を担当しています。温厚な人柄で、飼い主様のお話にもじっくり耳を傾けながら、一頭一頭の身体の状態に合わせて施術を行っています。

 

甲斐先生から飼い主様へ

発症してから早いほど、治癒する可能性も高くなります。愛犬、愛猫の腰や脚の様子がおかしいと気づいた場合は、ぜひ早めにご来院ください。

 

甲斐 達雄

 

カテゴリ|鍼灸

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