心臓病
僧帽弁閉鎖不全症の新しいリスク評価法「MINEスコア2」
循環器専門外来の獣医師 見上です。
「うちの子、最近なんだか疲れやすい?」
「健康診断で心臓に雑音があると言われたけど、大丈夫?」
このように愛犬の心臓病について、漠然とした不安を抱えていませんか?
小型犬に最も多い心臓病の一つ、僧帽弁閉鎖不全症(MMVD)は、気づかないうちに進行してしまう怖い病気です。今回は、その進行リスクをより正確に予測できる最新の研究についてご紹介します。
僧帽弁閉鎖不全症ってどんな病気?
僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある「扉」のような役割をしています。加齢や体質によってこの扉がうまく閉じなくなると、血液が逆流して心臓に大きな負担がかかってしまいます。特にチワワやダックスフンド、トイプードル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエルといった小型犬に多くみられます。
この病気は、国際的なガイドラインで4つのステージに分けられています。
- ステージA:まだ病気ではないが、なりやすい犬種。
- ステージB:心臓に雑音があるが、まだ症状がない状態。
-B1期:心臓の形に変化がない。
-B2期:心臓が大きくなり始めている。 - ステージC:咳や呼吸困難などの症状が出ている状態。
- ステージD:治療に反応しない、末期の状態。
初期の段階(B1、B2期)は目に見える症状がほとんどありません。「元気・食欲もあるから大丈夫」と思われがちですが、放置すると咳や呼吸困難、失神といった重い症状を引き起こし、最終的には命に関わることもあります。
新しい研究「MINEスコア2」とは?
2025年に発表された国際共同研究では、749頭の犬を解析し、僧帽弁閉鎖不全症の進行リスクを心エコー検査の3つの指標で簡単に評価できる画期的な方法が提案されました。この評価方法を「MINEスコア2」と呼びます。この新しいスコアを使えば、心臓の検査結果から「病気の進行スピード」を予測できます。
評価に使うのは以下の3つの指標です。
1.左心房と大動脈の比率(LA/Ao)
心臓から全身へ血液を送り出す大動脈に比べて、血液の逆流で大きくなってしまう左心房の大きさを測る指標です。
2.左心室の大きさ(体重で補正したLVIDDn)
血液を全身に送り出すポンプの役割をする左心室の大きさを、体重で補正して正確に評価します。
3.E波の速度(E-vel)
心臓が広がる際に血液が心室に流れ込む速度を測り、心臓の働き具合を評価する指標です。
この3つを組み合わせた「MINEスコア2」で、病気の進行スピードを3つのタイプに分類できます。
- 軽度(mild):平均で7年以上は無症状で過ごせる可能性が高い
- 中等度(moderate):平均で3年前後で症状が進行する可能性がある
- 重度(severe):平均で2年以内に心不全を発症するリスクが高い
飼い主さんにとって、この研究が意味すること
この研究結果は、同じ「B2期(症状はないが心臓に負担がかかり始めた状態)」と診断された犬でも、
- ゆっくり進行するタイプ
- 早く心不全になるタイプ
を区別できる可能性が出てきました。
これにより、以下のような方針をより正確に立てられます。
1.検査の頻度を調整できる
ゆっくり進行するタイプの子は、むやみに頻繁な検査を行う必要がなくなるかもしれません。
2.投薬のタイミングを見極められる
早く進行するタイプの子は、早期の投薬を開始することで、心不全の発症を遅らせたり、重症化を防いだりすることができます。
3.適切な生活管理ができる
愛犬のタイプに合わせて、食事や運動量といった生活管理のプランをより正確に立てられます。
まとめ:早期の正確なリスク評価が愛犬の未来を守る
僧帽弁閉鎖不全症は小型犬にとても多い心臓病ですが、早期からの正確なリスク評価が大切です。今回紹介した「MINEスコア2」は、従来の診断基準に加えて有力な指標となり、愛犬の未来を見据えた医療につながります。
当院では、エコー検査によるMINEスコア評価を行い、わんちゃん一頭一頭に合わせた最適なフォローアップを心がけています。
「うちの子も心臓が心配…」「健康診断で心雑音を指摘された」という方は、ぜひご相談ください。大切な家族の「いつも通り」が、いつまでも続くように。私たちが全力でサポートさせていただきます。
◆ 毎月3日間、循環器専門外来を実施しています。
◆ 完全予約制です。事前にご予約をお願い致します。
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