【犬猫】WPW症候群とは?突然の頻脈を引き起こす不整脈

循環器専門外来の獣医師 見上です。

 

「急に心拍数がすごく速くなった」
「元気だったのに突然ぐったりした」

このような症状の原因の一つに、WPW症候群(ウォルフ・パーキンソン・ホワイト症候群)という不整脈があります。WPW症候群は、心臓の電気信号が通常とは異なる経路を通ることで、突然、心拍数が異常に速くなる発作を起こすことがある病気です。特に若い犬や猫でも見られることがあり、見逃すと重篤化する可能性もあります。

本記事では、当院で実際に経験した1歳の猫の症例とともに、WPW症候群の原因や症状、検査・治療について、できるだけ分かりやすく解説します。

 

症例紹介|突然ぐったりした1歳の猫

症例
  • 動物種:猫

  • 年齢:1歳

  • 主訴:突然のぐったり・食欲低下

検査所見

心拍数:250~300回/分(著しい頻脈)

心電図検査では、以下の所見が認められました。

  • PR短縮:心房から心室へ電気が通常より早く伝わっていることを示す所見

  • デルタ波:心室の一部が通常より早く興奮することで現れる特徴的な波形

  • 発作性上室頻拍(PSVT):突然、心拍数が異常に速くなる不整脈

また、心エコー検査では、軽度の心機能低下(頻脈による影響)が確認されました。これらの検査結果から、WPW症候群が強く疑われました。※PR短縮やデルタ波はWPW症候群を疑う重要な所見ですが、心電図の状態によっては確認できない場合もあります。

 

治療と経過

急性期対応
  • 抗不整脈薬の投与

  • 心拍数のコントロール

 

その後の経過
  • 頻脈コントロール後に状態が改善

  • 心機能も回復

今回の症例では、頻脈が改善したことで心臓の機能も回復しました。このように、頻脈が長く続くことで心臓の収縮力が低下する状態を、頻拍誘発性心筋症と呼びます。頻拍誘発性心筋症は、適切に不整脈をコントロールすることで、心機能の改善が期待できる場合があります。

 

WPW症候群とは?心臓の電気の流れに起こる異常

正常な心臓の電気の流れ

心臓は通常、決まったルートで電気信号が流れることで、規則正しく拍動しています。心房から心室へ電気が伝わる際には、通常「房室結節」という部分を通ります。

 

WPW症候群の場合

WPW症候群では、生まれつき存在する**「副伝導路(バイパス)」**によって、通常とは異なる経路でも電気が伝わります。

その結果、

  • 電気が通常の経路をショートカットする

  • 電気信号が心房と心室の間を繰り返し回ることがある

  • 突然、心拍数が異常に速くなる

といった現象が起こります。

ただし、副伝導路があるからといって、必ず頻脈が起こるわけではありません。副伝導路が関与して頻拍発作を起こすことが、WPW症候群の重要な特徴です。

 

WPW症候群はなぜ危険なのか?

① 頻脈が止まらない

心拍数が異常に速い状態が続くと、心臓が十分に血液を送り出せなくなることがあります。また、心臓が拡張して血液を取り込む時間も短くなります。

 

② 心筋が疲弊する

頻脈が長く続くと、心臓の筋肉に負担がかかり、収縮力が低下することがあります。これが頻拍誘発性心筋症です。

 

③ 重症化すると
  • 失神

  • 心不全

  • 重篤な不整脈による突然死

などにつながる可能性があります。そのため、突然の頻脈や原因不明の失神を繰り返す場合には、早めに原因を調べることが大切です。

 

WPW症候群はどのような検査で分かる?

WPW症候群を疑う場合、特に重要なのが心電図検査です。

心電図検査

心臓の電気信号を記録し、PR短縮やデルタ波、頻拍発作時の波形などを確認します。ただし、発作が起きていない時には異常が分かりにくい場合もあります。

 

ホルター心電図検査

通常の心電図で異常が確認できない場合には、長時間の心電図記録が役立つことがあります。特に、突然ぐったりする、時々失神するといった症状を繰り返す場合には、発作時の心電図を記録することが重要です。

 

心エコー検査

心臓の大きさや動き、収縮力を確認します。頻脈によって心機能が低下していないか、ほかに心臓の病気が隠れていないかを調べます。

 

WPW症候群の治療と科学的エビデンス

① 発症の特徴
  • 先天的な副伝導路が関係している

  • 若齢で発見されることがある

  • 症状が断続的に現れる場合がある

犬や猫でも報告されている不整脈ですが、特に猫では報告数が限られており、詳しい発症頻度は明らかになっていません。

 

② 頻拍誘発性心筋症

持続する頻脈によって、

  • 心拡大

  • 心臓の収縮力低下

が起こることが報告されています。一方で、頻脈を適切にコントロールすることで、心機能が改善する可能性があります。実際に犬89頭を対象とした研究では、副伝導路に関連する不整脈を持つ犬の46.1%に頻拍誘発性心筋症が認められ、カテーテル治療後には心機能の改善が報告されています。

 
③ 治療の有効性
  • 抗不整脈薬によって頻脈をコントロールする

  • 症例によってはカテーテルアブレーションによる治療を検討する

カテーテルアブレーションとは、異常な電気の通り道をカテーテルで遮断する治療です。人医療では根治を目指す治療として広く行われていますが、犬でも治療の有効性が報告されています。ただし、動物では実施できる施設が限られ、すべての症例に適応できるわけではありません。

 

飼い主様に知っておいてほしいポイント

このような症状は要注意
  • 突然ぐったりする

  • 心拍が異常に速い

  • 呼吸が荒い

  • 失神する

こうした症状はWPW症候群以外の心臓病や不整脈でも起こるため、原因を調べることが重要です。特に、意識を失う、呼吸が苦しそう、ぐったりして動けない場合には、速やかに動物病院を受診してください。

 

若いから安心ではない

WPW症候群は、先天的な副伝導路が関係するため、若い犬や猫でも発症することがあります。「まだ1歳だから心臓病ではない」とは限りません。

 

放置しないことが重要

頻脈が長く続くことで、心臓の機能が低下する場合があります。一方で、早期に発見し、適切な治療を行うことで、状態の改善が期待できます。

 

当院の考え方|若い犬猫の不整脈も見逃さないために

当院では、

  • 若齢動物の頻脈

  • 原因不明の失神

  • 発作性の元気消失

がある場合、積極的に心電図評価を行います。不整脈は、診察時には症状が現れないこともあります。そのため、飼い主様から伺う発作時の様子や、必要に応じた心電図検査・心エコー検査などを組み合わせて評価することを大切にしています。

 

まとめ|突然の頻脈や失神は心臓からのサインかもしれません

  • WPW症候群は、通常とは異なる電気の通り道(副伝導路)が関係する不整脈です

  • 若い犬や猫でも発症することがあります

  • 頻脈が続くと、頻拍誘発性心筋症を引き起こす場合があります

  • 心電図検査が診断の重要な手がかりになります

  • 適切な治療によって、症状や心機能の改善が期待できます

 

不整脈は見た目では分かりにくい病気です。

「急にぐったりした」 「元気だったのに突然倒れた」 「心拍数が異常に速い気がする」

このような症状が見られた場合は、若い犬や猫であっても、心臓に異常が隠れている可能性があります。「いつもと違う」と感じた場合は、早めの受診をおすすめします。

 

【当院からのお知らせ】

当院では、心臓の精密検査(レントゲン・心エコー等)に基づいた正確なステージ診断を行っております。「心臓の状態を詳しく知りたい」「お薬のタイミングを相談したい」という飼い主様は、お気軽に当院までご相談ください。

◆ 毎月4日間、循環器専門外来を実施しています。
◆ 完全予約制です。事前にご予約をお願い致します。

 

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カテゴリ|心臓病

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