鍼灸
老犬の足腰が弱ってきたら?考えられる原因と鍼灸治療という選択肢
「最近、散歩の途中で立ち止まることが増えた」
「寝起きに立ち上がるまで時間がかかる」
「後ろ足がふらつくようになってきた」
愛犬が年齢を重ねるにつれて、このような変化を感じることはありませんか?
犬も人と同じように、加齢に伴って筋肉量や運動機能が低下することがあります。しかし、足腰が弱ってきたように見えても、必ずしも年齢だけが原因とは限りません。関節の痛みや神経の病気が隠れている場合もあり、原因によって必要な治療は異なります。
今回は、兵庫県加古川市のバークレー動物医療センターが、老犬の足腰が弱る原因や、ご家庭で気づきたい変化、日常生活での工夫について解説します。さらに、当院で実際に行ってきた椎間板ヘルニアの治療例を交えながら、鍼灸治療という選択肢についてもご紹介します。
1.老犬の足腰が弱ってきた?こんな変化はありませんか
足腰の衰えは、突然歩けなくなるような大きな変化だけでなく、日常生活のちょっとした行動にも現れます。
例えば、次のような様子が見られることがあります。
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散歩の距離が短くなった、途中で立ち止まる
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寝ている状態から立ち上がるまで時間がかかる
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ソファや段差に上がりたがらなくなった
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階段の上り下りを嫌がる
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後ろ足がふらつく、踏ん張りが利かない
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フローリングで滑りやすくなった
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歩くときに足先を擦るようになった
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以前より寝ている時間が増えた
こうした変化は少しずつ進むこともあるため、毎日一緒に暮らしていると気づきにくいものです。「もう年だから仕方ない」と思っていた行動の変化が、実は痛みや病気のサインであることもあります。
2.老犬の足腰が弱くなる主な原因
① 筋肉量の減少
犬も年齢を重ねると、筋肉量や筋力が低下することがあります。特に後ろ足の筋肉が弱くなると、立ち上がる、踏ん張る、段差を上るといった動作が難しくなることがあります。また、運動量が減ることでさらに筋肉が落ち、身体を動かす機会が少なくなるという悪循環につながる場合もあります。ただし、筋肉量が減っているからといって、無理に運動量を増やせばよいわけではありません。
② 変形性関節症
変形性関節症は、関節の軟骨や周囲の組織に変化が生じ、慢性的な痛みや動かしにくさにつながる病気です。高齢犬で見られることがあり、股関節や膝関節、肘関節など、さまざまな関節に起こります。例えば、寝起きに動き出すまで時間がかかる、散歩の最初は歩きにくそうにする、階段を嫌がるといった変化が見られることがあります。
③ 椎間板ヘルニアなどの神経疾患
背骨の間にある椎間板が突出するなどして脊髄を圧迫すると、痛みや神経症状が現れることがあります。椎間板ヘルニアでは、後ろ足のふらつきや力の入りにくさ、歩行の異常などが見られる場合があります。また、足腰の動きに影響する神経疾患は椎間板ヘルニアだけではありません。
「後ろ足が弱くなった=筋力の衰え」と自己判断せず、原因を確認することが重要です。
椎間板ヘルニアについては、以前のブログ「犬の椎間板ヘルニアに鍼灸治療はできる?治療の考え方を解説」でも詳しくご紹介しています。
④ その他の病気や体調の変化
足腰が弱ってきたように見える原因には、関節や神経の問題以外にも、全身的な体調不良や筋肉の病気などが関係する場合があります。そのため、歩き方だけでなく、食欲や元気、体重の変化なども確認することが大切です。
3.歩き方だけではない!老犬の身体に現れる小さな変化
足腰の状態を確認するとき、歩けるかどうかだけに注目していませんか?実は、身体の使い方や姿勢にも変化が現れることがあります。
立ち上がるときの動き
若い頃はすぐに立ち上がっていたのに、最近は前足で身体を支えながら、ゆっくり後ろ足を起こすようになった。このような変化には、筋力低下だけでなく、関節の痛みなどが関係している場合があります。
立っているときの姿勢
後ろ足の幅が以前より広くなったり、背中を丸めたり、身体を片側に傾けたりすることがあります。身体のどこかに痛みや動かしにくさがあると、負担を避けるような姿勢になることもあります。
足先の擦れや爪の減り方
歩くときに足先を地面に擦るようになると、特定の爪だけが削れやすくなる場合があります。こうした変化は、足の運び方や神経の働きに異常があることを示す手がかりになることもあります。
寝る姿勢や座り方
以前は自然にできていた「おすわり」や「伏せ」がしづらくなることもあります。関節の動かしにくさや痛みなどが関係している場合があるため、普段の姿勢も観察してみましょう。ご自宅での様子を動画で撮影しておくこともおすすめです。特に、歩いているところだけでなく、寝ている状態から立ち上がるところや、方向転換するところなどを撮影しておくと、診察時の参考になる場合があります。
4.老犬の足腰を守るために、ご家庭でできること
滑りにくい床にする
フローリングなどの滑りやすい床では、足を踏ん張りにくくなり、関節や筋肉に負担がかかる場合があります。よく歩く場所に滑りにくいマットを敷くなど、生活環境を工夫してみましょう。
段差を減らす
ソファやベッドへの上り下り、階段などは、足腰に負担がかかることがあります。スロープを設置したり、生活する場所を見直したりすることで、無理な動きを減らせます。
適切な体重を維持する
体重が増えすぎると、関節や足腰への負担が大きくなります。一方で、高齢犬では体重だけでなく筋肉量の維持も大切です。食事量をむやみに減らすのではなく、体型や筋肉の状態を確認しながら適切な体重管理を行いましょう。
無理のない運動を続ける
足腰が弱くなってきたからといって、すべての運動をやめてしまうと、筋肉量の低下につながることがあります。ただし、痛みや神経症状がある場合には、運動を制限する必要があることもあります。その子の状態に合わせて、散歩の距離や時間、運動方法を調整することが大切です。
5.当院で実際に行った、椎間板ヘルニアの治療例
足腰の不調に対する治療方法は、一つではありません。当院では、これまで椎間板ヘルニアなどの神経疾患に対して、鍼灸治療や外科手術などを行ってきました。過去に当院で治療した頸部椎間板ヘルニアの症例では、四肢に麻痺が見られ、鍼灸治療を行っていました。
しかし、十分な改善が見られなかったため、外科手術を実施しました。手術では、脊髄を圧迫していた椎間板の内容物を取り除き、神経への圧迫を軽減する処置を行いました。その後も鍼灸治療を継続し、リハビリテーションを行いました。
この症例からも分かるように、鍼灸治療だけですべての症状に対応できるわけではありません。状態によっては外科手術などの治療が必要になることもあり、治療後の身体の状態に合わせて鍼灸やリハビリを取り入れる場合もあります。大切なのは、特定の治療方法にこだわるのではなく、その子の状態に合った方法を考えることです。※この症例は椎間板ヘルニアの治療例であり、高齢犬の筋力低下に対する鍼灸の効果を示すものではありません。
6.老犬の足腰の不調に、鍼灸治療という選択肢
足腰の痛みや身体の動かしづらさなどに対して、治療の選択肢の一つとして鍼灸が検討されることもあります。
当院では、鍼灸担当獣医師の甲斐達雄が、長年にわたり犬・猫の鍼灸治療に携わっています。椎間板ヘルニアなどの症例を中心に鍼灸治療を行ってきた経験があり、現在も毎週火曜日・金曜日に施術を担当しています。
ただし、高齢犬の足腰の不調には、筋力低下、関節疾患、神経疾患など、さまざまな原因があります。鍼灸は、こうした病気そのものをすべて治す治療ではありません。また、鍼灸によって必ず歩行機能が改善するというものでもありません。
現在受けている治療と組み合わせることも含めて、その子の状態に応じた治療方法を考えていきます。
「今受けている治療に鍼灸を組み合わせられる?」
「年齢を重ねて足腰が弱ってきたけれど、鍼灸を受けられる?」
といった場合も、ご相談ください。
7.こんな症状がある場合は、早めに動物病院へ
足腰の変化には、ゆっくり進行するものもあれば、早急な診察が必要なものもあります。
特に、次のような症状が見られる場合には注意が必要です。
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急に立ち上がれなくなった
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後ろ足を引きずっている
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急に歩けなくなった
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強い痛みがあり、鳴いたり身体を触られるのを嫌がったりする
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歩行の異常とともに排尿がうまくできなくなった
このような場合には、鍼灸治療を検討する前に、速やかに獣医師の診察を受けてください。
8.「もう年だから」と諦めず、足腰の変化に目を向けましょう
愛犬が年齢を重ねると、以前と比べて歩く速度が遅くなったり、段差を嫌がったりすることがあります。こうした変化には加齢による筋力低下が関係する場合もありますが、関節や神経の病気などが隠れていることもあります。また、原因によっては治療や生活環境の見直しによって、日常生活の負担を軽減できる場合もあります。
「もう年だから仕方ない」と決めつけず、日常生活の小さな変化に気づいてあげることが大切です。
兵庫県加古川市のバークレー動物医療センターでは、足腰の痛みや歩き方の変化などについて診察を行い、症状や身体の状態に応じて治療方法をご提案しています。また、鍼灸担当獣医師による犬・猫の鍼灸治療も行っています。
加古川市周辺で愛犬の足腰の衰えや鍼灸治療についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。
甲斐 達雄 鍼灸専門獣医師鳥取大学獣医学部卒業 1972年、鍼麻酔による手術のニュースをきっかけに鍼治療に興味を持ち、その後、犬・猫の鍼灸治療に携わってきました。長年にわたり鍼灸について研鑽を重ね、現在は週2回、当院で鍼灸治療を担当しています。温厚な人柄で、飼い主様のお話にもじっくり耳を傾けながら、一頭一頭の身体の状態に合わせて施術を行っています。
甲斐先生から飼い主様へ発症してから早いほど、治癒する可能性も高くなります。愛犬、愛猫の腰や脚の様子がおかしいと気づいた場合は、ぜひ早めにご来院ください。 |
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