【犬・猫】循環器外来で発見した希少な3症例

当院では毎月1~2日間、循環器専門外来を実施し、心臓病を専門に診察されているエキスパートの先生をお招きしています。

 

今回は循環器専門外来だからこそ診断できたであろう、珍しい3症例をご紹介します。

 

動脈管開存症(PDA)

動脈管とは赤ちゃんが母体のお腹の中にいる=胎児の時に、肺動脈から大動脈への抜け道になっている血管のことです。

胎児の時には肺で呼吸をしないことから、肺にはあまり血液を流す必要はありません。

肺には血液を流さないで、全身に新鮮な血液を流すために動脈管があります。

 

生まれた後は肺が働きはじめるため、通常は生後数時間で動脈管は機能しなくなり、その後動脈管は塞がっていきます。

これが閉鎖せずに残っている状態が動脈管開存症です。

 

初期は特に症状はみられませんが、状態が進行すると、運動してもすぐ疲れたり、咳をしたりするなどの症状が現れます。

 

動脈管開存症の根本的な治療は外科的治療となり、動脈管を糸で結ぶなどして閉鎖します。

しかし、状態が進行している症例では手術適応ではなくなるため、早期発見して早期に治療を行っていく必要があります。

 

 

今回の症例は1歳ポメラニアンの子で、他院様で心雑音があるとのことで、紹介でご来院いただきました。

エコー検査(超音波検査)の動画です。

本来だと青色、または赤色なのですが、血流の流れが異常な場合に黄色や緑色となります。

 

☟通常の心臓

 

 

☟今回の動脈管開存症の心臓

 

今回の子は外科手術を行いましたので、それは後日、別の症例報告でお伝えできればと思います。

 

三心房心

こちらも聞き馴染みのない病気かと思います。

普通、心房は右と左の二つです。

しかし、右心房あるいは左心房の内部に隔壁があり、心房が二つに分かれていることがあります。

このため、心房が3つある状態になり、3つの心房がある心臓ということで「三心房心」と言います。

 

今回の症例は1歳の猫ちゃんで、左心房に膜(隔壁)がある状態でした。

息切れや呼吸困難などを引き起こす恐れがあります。

 

☟今回の三心房心の心臓

 

 

外科手術をすることもありますが、今回の子は内服薬で治療を行っています。

 

 

右室二腔症 & 肺動脈弁狭窄

1歳の猫ちゃんの症例です。

右室二腔症とは、右室内に異常に発達した筋繊維の束があり、これにより右室内に二つの部屋があるような状態をいいます。

肺動脈弁狭窄症とは、右心室から肺に血液が流れ出るときに開く肺動脈の弁が狭くなる状態をいいます。

この子は他にも心臓病の合併症を引き起こしている可能性があります。

 

☟今回の症例の心臓

 

 

今回紹介をした3症例とも先天性の心臓病で、1歳という若い年齢で発見されています。

心臓病は基本的には不可逆的(元には戻らない)なもので、進行を抑えることはできても、治すことはできない病気です。

 

そのため、早期に発見して、進行を遅らせることが大事になってきます。

 

 

 

今回の症例は、数多の心臓疾患を診てきた見上先生だからこそ発見できたといっても過言ではありません。

 

心臓エコーは見たい場所を映す技術と、映した画像から病気を診断する知識が必要です。

今回の症例も「何か心臓に異常がある」とわかっても、診断するのは非常に難しいです。

診断が出来なければ適切な治療が行えません。

 

何か心臓に異常はあるけど、何かわからない...

とお悩みの方は当院の循環器専門外来にご相談下さい。

循環器専門外来はこちら

カテゴリ|心臓病

ページトップへ