バークレー便り
先日、痛ましいニュースが報じられました。三重県の獣医師が、SFTS(重症熱性血小板減少症候群)に感染した猫を診察した後に、ご自身もSFTSに感染し、亡くなられたというものです。心からお悔やみ申し上げます。
このニュースは、マダニが媒介する感染症の恐ろしさと、それが動物だけでなく私たち人間にも感染する「人獣共通感染症(ズーノーシス)」であることを改めて教えてくれました。特に、SFTSは致死率の高い非常に危険な病気です。
SFTS(重症熱性血小板減少症候群)とは?
SFTSは、SFTSウイルスを持つマダニに咬まれることで感染する病気です。犬や猫だけでなく、人間も感染します。
【犬や猫の症状】
感染しても無症状のこともありますが、
- 元気消失
- 食欲不振
- 発熱
- 嘔吐
- 下痢
などの症状が見られます。重症化すると、血小板の減少などにより出血傾向が現れ、命に関わることもあります。
【人間の症状】
- 発熱
- 倦怠感
- 消化器症状(食欲不振、嘔吐、下痢)
などが主な症状です。重症化すると、意識障害や出血傾向が見られ、最悪の場合、死に至ることもあります。
マダニが媒介するその他の人獣共通感染症にも注意!
SFTS以外にも、マダニは私たち人間とペットに共通して感染する様々な病気を媒介することがあります。
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日本紅斑熱(にほんこうはんねつ): 発熱、頭痛、倦怠感に加え、全身に発疹が現れる病気です。マダニに刺された部分には特徴的なかさぶた(刺し口)ができます。重症化すると多臓器不全に至ることもあります。犬や猫は感染しても無症状のことが多いですが、マダニから人間にうつる可能性があります。
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ライム病: 初期には特徴的な遊走性紅斑(円形の赤い発疹)や発熱、頭痛、倦怠感が見られます。進行すると関節炎、神経症状、心臓の異常などを引き起こすことがあります。犬では関節炎や発熱、食欲不振が見られます。
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バベシア症: 主に犬に寄生して赤血球を破壊し、貧血、発熱、食欲不振、黄疸などを引き起こす寄生虫病です。人間への感染は比較的稀ですが、免疫力が低下している人などでは発症することもあります。
これらの病気も、マダニによって媒介され、人間とペット両方に影響を及ぼす可能性があるため、予防が非常に重要です。
なぜマダニ予防が大切なのか?
「うちの子は室内飼いだから大丈夫」と思っていませんか? 実は、室内飼いのペットでもマダニに感染するリスクはゼロではありません。散歩の際に飼い主さんの服や靴にマダニがついて室内に持ち込まれる、庭にいる野生動物からマダニが落ちる、といった経路で、知らず知らずのうちにマダニが侵入してしまうことがあるからです。
マダニ予防は、以下のような理由から非常に重要です。
- 大切なペットをSFTSや他のマダニ媒介性疾患(日本紅斑熱、ライム病、バベシア症など)から守るため。
- マダニが媒介する人獣共通感染症から、ご家族の健康を守るため。
- 万が一感染してしまった場合の、心身への負担や高額な治療費を避けるため。
当院でできるマダニ予防
当院では、ワンちゃん・ネコちゃんのマダニ予防薬を各種取り揃えております。
飲み薬タイプやスポットタイプなど、様々な種類があり、それぞれのライフスタイルや性格、体重に合わせて最適なものをご提案いたします。
「うちの子にはどの予防薬が良いの?」「どんなことに気をつけたらいい?」など、ご不明な点があれば、どうぞお気軽に当院スタッフにご相談ください。専門知識を持ったスタッフが、丁寧にご説明し、飼い主様の疑問を解消いたします。
予防は「もしも」のための大切な一歩
マダニ予防は、大切な家族とご自身の健康を守るための、最も効果的な手段です。たった一つの小さなダニが、取り返しのつかない事態を引き起こす可能性があることを忘れてはいけません。
暖かくなり、マダニの活動が活発になるこれからの季節。ぜひこの機会にマダニ予防を始めてみませんか? ご家族全員の安心のために、積極的な予防をお願いいたします。
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