バークレー便り
先日、頭頚部の外科セミナーに参加するため、名古屋まで行ってきました。
実は神経外科セミナー(8月22~24日)の最終日の夜に開催されたため、17時まで大阪で神経外科セミナーを受講し、その後ダッシュで新幹線に乗って21時スタートの頭頚部外科セミナーに参加しました!
21時~23時のセミナーだったので、セミナー当日は名古屋泊り。
翌朝、朝早くの新幹線で加古川に戻り、ご来院の動物さん達の診察をしました。
ハードな数日間ではありましたが、最新の知識を得る楽しさ、得た知識を動物たちに還元していきたいという思いが溢れた、充実した数日間でした!
頭頚部外科セミナー
■日時:8月24日(木)
■会場:名古屋
■内容
鼻から喉頭-咽頭領域の外科疾患を中心にお話しいただきました。上気道の疾患の中でも特に上気道閉塞症候群は多くの動物病院で非介入で放置されており、結果的に罹患動物(非短頭種や猫にも意外と多いです)の生存やQOLを悪化させています。今回はこの上気道閉塞症候群(BOAS)を中心にさまざまな上気道の疾患を確実に診断して介入に結び付けられる手法を解説していただきました。
犬の上気道閉塞症候群(BOAS)
今回のセミナーテーマである犬の上気道閉塞症候群(BOAS)について解説いたします。
犬の上部気道閉塞症候群とは?
上気道の気道抵抗が諸々の原因によって高まり、二次性に様々な疾患を誘発して、時に死亡に至る疾患です。
パグやフレブル、ブルドッグなどの短頭種は鼻孔狭窄(外観上の鼻の穴が小さい)、狭窄性鼻甲介(鼻の中が狭い)、軟口蓋過長症(軟口蓋という喉の奥の部分が長い)を持って生まれることが多く、これらの疾患は上部気道に問題を起こし、しばしば呼吸困難を起こすことが知られています。
とは言え、上気道閉塞症候群は短頭種だけが発症するわけではありません。咽頭気道閉塞症候群(PAOS)といって、咽頭の尾側変位、咽頭背側壁の過剰、舌の下降などによって、上部気道に問題を起こすケースもあります。
上部気道障害の診断
・身体検査(外貌、聴診など)
・頭部のレントゲン検査
・運動前後の臨床兆候
・麻酔下での咽頭~喉頭の視診
・内視鏡検査(軟性鏡を用いて軟口蓋や咽頭、喉頭などを評価)
などを複合的に行い、診断をしていきます。
犬の上部気道障害の治療
根本的な治療は外科手術です。
上部気道障害を引き起こしている原因に応じて、手術内容を決めます。
(1)鼻孔形成術:外鼻孔を広げる手術
(2)軟口蓋切除術:長すぎる軟口蓋を短くする手術
(3)披裂軟骨部分切除術:咽頭軟骨の1つである披裂軟骨の一部を切除する手術
猫の上気道閉塞
今回のセミナーでは猫ちゃんの上道気道閉塞についても学びましたので、こちらも紹介いたします。
猫の上部気道閉塞症候群とは?
わんちゃんと同じく、特に短頭種で多発し、鼻孔狭窄(外観上の鼻の穴が小さい)、軟口蓋過長症(軟口蓋という喉の奥の部分が長い)、鼻甲介(鼻の中)の奇形や閉塞が原因となることが多いです。
呼吸困難や呼吸不全、循環器疾患、運動不耐性といった症状や二次性の変化が認められます。
猫の上部気道障害の治療
根本的な治療は外鼻孔拡大の外科手術です。
(1)鼻側の切除:鼻翼による狭窄に有効
(2)口唇側の切除:口唇による狭窄に有効
ワンちゃん、猫ちゃんが息苦しそう…といった症状がありましたら、お気軽に当院までご相談ください。
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