当院に関して
最適な切開&最適な縫合を目指した手術
当院の手術では、より動物に負担の少ない手術方法をオーダーメイドで考えています。
今回はその中で
- 切開
- 縫合
について紹介したいと思います。
最適な切開
皮膚の切開というと、「単純に真っすぐ切る」のが普通だと思います。
しかし、当院では血液の流れ、臓器や器官(骨や筋肉、腱など)を考慮して、必要に応じて弧を描くように切開します。
また、切開する方向も意識しています。
これらを意識することで、動物の体への負担を最小限に抑えることができます。
ちなみに、以下の画像は避妊手術の設計図です。(この画像だけでは何が何かわからないでしょうが)
一般的な避妊手術の術式はありますが、より動物にとって負担の少ない、解剖学的に合理的な手術を追い求めています。
最適な縫合
当院では、動物の体格、手術部位などを考慮して、最適な縫合糸を使い分けています。
縫合糸には多数の種類があり、上手く使い分けてあげることが大切です。
1.縫合糸とは?
手術で使われる縫合糸は、体内で吸収される性質のものか吸収されない性質のものかで大きく2種類に分かれます。
■吸収性縫合糸
一定の期間は創部を固定する強度をもち、加水分解などで時間が経つと吸収されます。
糸の種類によって、抗張強度維持期間と吸収期間が異なります。
●主な使用部位:消化管・筋膜・筋層・皮下組織・尿路生殖器など
■非吸収性縫合糸
生体内で分解・吸収されずに残留します(長期間をかけて劣化するものも含む)。
長期間にわたり保持する必要のある組織に使用されることが多いです。
●主な使用部位:皮膚(表皮)・血管・神経組織・骨・靭帯など
吸収されてなくなる糸であれば抜糸をする必要がないので、吸収性の糸の方が良い場合もあります。
しかし、溶けることで強度がなくなってしまうと困る場合もあるので、非吸収性の糸が求められる場合もあります。
2.糸の素材
■天然
シルク(絹)が主に使用されおり、動物の腸から作るカットグットという糸もあります。
昔から使われており、合成素材と比較すると強度は低いです。
組織の反応が少なく、強度があります。
■合成
ポリエステル、ポリグリコール、ナイロンでできた糸です。
現在使用される糸の大半は合成糸です。
3.糸のサイズ
縫合糸は糸の太さによって分類されています。
アメリカのU.S.P(米国薬局方)による分類では、1番太いものが10号で、1号小さくなるごとに細くなり、1号より細いものは1-0、2-0という順番に細くなります。
一番細い12-0の糸は、直径が0.001mmから0.009mmまでと定められています。
例えば、当院で「鼠蹊ヘルニア&肛門腫瘍」をした子の場合、以下の糸を使用して手術を行いました。
①ナイロン3-0
②ナイロン4-0
③プロリーン4-0
④プロリーン3-0
⑤PDSⅡ2-0
⑥PDSⅡ4-0
⑦PDSⅡ5-0
⑧モノクリル5-0
8種類の糸を使っています。
犬種、猫種、体格、縫合部位など様々な観点から糸を使い分けています。
このように、当院では最適な切開や最適な縫合を目指した手術を行っています。