バークレー便り

獣医師 徳岡徹也 自己紹介はこちら

短頭種気道症候群Part2

2013/12/04(水) いぬ

今回は前回のラスベガス放浪記のつづき…ではなく、以前触れた短頭種気道症候群の手術を行う機会がありましたので、前回載せることができなかった写真と共に経過をご紹介。

今回は手術の決心をされていたため手術説明は30分程度で終了…決して早く終われというスタッフの視線が痛かった…わけでは…

短頭種気道症候群の怖いところは小さいころから呼吸音がガーガーいってるのが普通になってしまってるため、ご家族がそれが当たり前になってしまっているところです。

そのままにしておくと年を取るにつれ呼吸状態が悪化することもあり、突然死の危険性も高くなります。

ただし犬は人のように、はい、あーんして!ってしてくれないんですよね…実際の喉の状況は麻酔をかけてから手術の直前までどの程度なのかわからない。

なので手術時に起こりうることは何度も時間をかけて説明し理解していただくようにしています。

さて、今回手術を受けたきなこちゃん。多くのフレンチブルドッグに共通することですが、まぁ元気!

診察室に入るのを嫌がる子たちが多い中、この子たちはなぜか飼い主さんより先に診察室に入ってくることが多いんですよね。

話を戻してきなこちゃん、普段の呼吸はそれほどひどくはないのですが、いざ手術となり麻酔をかけるとあっという間にチアノーゼ…これは予想範囲内なので気管挿管して事なきを得ました。

短頭種気道症候群をもつ犬にはよくあることですが、意識がない状態だと喉がつまってしまって呼吸ができなくなってしまうことがあります。

これがフレンチブルドッグは麻酔が怖いから…と言われる原因の一つと思われます。

 

手術の流れですが、まずは外鼻孔狭窄を整形します。 

 

写真向かって右側が鼻孔手術後。左側の鼻孔と比べると少し大きくなっているのがわかっていただけるでしょうか?鼻孔の空気抵抗は幅が1mm変わるだけで何倍も変化します。

なので少し広げたらあとは見た目との兼ね合いで調整します。

手術のやり方によっては鼻翼の下の方を完全に切り取るやり方もあるのですが、鼻の穴が大きくなりすぎる気がするのでやったことはありません…

続いて余分な軟口蓋を切除します。

麻酔がかかった状態で喉の奥を確認し、

     余分な軟口蓋を前方に引っ張って…

     切除するとこんな風に喉の奥が少しすっきりします。

手術はこれで終了…って書いてしまうと非常に簡単そうなんですが、どこまで切るべきか意外と悩む手術なんです。

この手術最大の難所は手術よりも手術後!麻酔覚醒がスムーズに行えるかどうか。麻酔をかけるときと同様に呼吸困難を起こさないようにゆっくりと注意深く覚ましていきます。

麻酔からしっかり覚めることができれば一安心。あとは、お水やご飯をちゃんと飲み込むことができるかどうかを確認して退院です。

頑張って手術に耐えてくれたきなこちゃん。手術後一週間目には走り回ってはしゃいだ後の呼吸の荒さもかなり楽になったようで、フレンチブルドッグ集会!?にも張り切って参加。

元気な毎日を送っているようで、術後健診でもいつもと変わらず先頭きって診察室に。獣医師としてはうれしい瞬間ですね。

 

短頭種気道症候群の手術の効果は様々ですが、呼吸を少しでも楽にしてあげるとともに、えづきなどの呼吸以外の症状を改善する可能性もあります。

反応は様々ですが手術前にお薬で呼吸が楽になった状態を確認していただくことも可能ですので、気になる方はお気軽にご相談ください。

 

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